NISAでインデックス投資をしようと思ったとき、どのくらいの期間、運用したらよいのか、迷ったことはないだろうか。
運用は、基本的には、長期間行ったほうが良いと言われる。その理由は、インデックス投資の場合、その運用期間が長ければ長いほど複利効果により利益が増え、またリスクも減るからである。
では、ここでいう長期とは、いったいどのくらいかと言うと、5年という人もいれば10年や20年という人もいて、決まりがあるわけではない。
ポイントとしては、一般的に以下のようなことは言える。(インデックス投資の場合であり、個別株投資などはまた別の話)
- 運用期間が短いほどリスクは高い
- リターンが高い商品ほどリスクは高い
- よって、まっとうなリスクの商品の場合、運用期間が短いものほど低リターンになる
なので、運用期間はリスクとリターンの関係で考える必要がある、とも言えるだろう。
ここからは、リスクリターンに対して、どの程度、運用期間が必要なのかを、「元本割れ確率」から考えてみたい。
元本割れ確率とは
元本割れ確率とは、そのまんまの意味で、元本割れする確率である。
平均リターンとリスク(標準偏差)が変わらないと仮定した場合の運用期間ごとの元本割れ確率は簡単に計算できる。リスク(標準偏差)とは、期待リターンに対する振れ幅である。
例えば、『平均リターン年6%』『リスク18%』とした場合の元本割れ確率は以下のようになる。
運用期間1年の場合、元本割れする確率は約37%あるが、20年運用し続ければ(リターンとリスクがずっと変わらなければ)約1%まで下がる。(この『リターン6%、リスク18%』は、全世界株式の実績値より、ちょっと辛めの数値、といったところだろうか。)
『約37%の確率で元本割れ』は、リターン6%を考えると、ちょっと割に合わない感じがする。(1年でも約6割の確率で勝てる!と前向きにとらえる人もいるかもしれないが)
5年の21%でも、ちょっとどうだろうか…。やはり「10年くらいはやったほうがいいかな」という人が多い気がする。5年以上という人もいれば、10年以上という人もいるのは、このへんの感覚の違いだろうか。
ポートフォリオ別の元本割れ確率
リターンとリスクは、ポートフォリオ(資産配分)によって変わる。一般的に、いくつかの資産を組み合わせると、分散効果によりリスクが減少して安定する。
筆者がよく使っている資産配分ツールでは、過去数十年間の実績をもとに、ポートフォリオのリスクリターンが計算できる。これを使って、ポートフォリオ別の元本割れ確率を計算してみる。
なお、以下に示す計算結果は、過去の実績をもとに平均リターンとリスクを試算し、その数値に基づいて元本割れ確率を計算したものであり、その結果を保証したり今後の予測を示すものではないのでご了承いただきたい。
先進国株式50%、先進国債券50%
▶平均リターン7.8%、リスク12.6%
よくある株式と債券半分ずつである。この例では、15年以上運用すれば元本割れの確率はかなり低いという結果になる。これなら、5年程度で運用しようという気にもなるかもしれない。
先進国株式25%、先進国債券25%、日本株25%、日本債券25%
▶平均リターン6%、リスク9.4%
GPIFで使われているとよく言われるポートフォリオ。株式・債券50%ずつと比較して大差はないが、期間が長くなっていったときの元本割れ確率は少しずつ大きくなる。
日本株80%、現金20%
▶平均リターン5.5%、リスク13.4%
日本株メインにしてみると、全体的に確率は上がった。「なにに投資するか」が変われば、リスクリターンは変わり、短期でも長期でも、元本割れ確率は変わると言うのがお分かりいただけるだろう。
米国株50%、金(ゴールド)50%
▶平均リターン12.5%、リスク13.6%
これはちょっと番外編で。ここ数十年の実績で、やたらと強かった米国株とゴールドを半分ずつとした場合である。もはや5年で1%を割り、10年で元本割れ確率は限りなく0に近くなる。リターン12%でこれなら、5年未満の期間でも、なんかよさそうに感じるのではないか。
以上、ポートフォリオ別の元本割れ確率であった。
なお、これはあくまでリスクリターンの平均がずっと続く計算なので、実際は同じ商品でも常に変動している。そのため、特に短期の数値は、変動も大きく、この計算どおりというわけにはいかないので注意してほしい。
運用期間と資金の性質に合わせてリスクヘッジを
インデックス投資の運用期間としは、個人的には以下のように考える。
- 基本的には長ければ長いほど良い
- 運用期間や資金の性質にあわせてリスクヘッジを
どの程度のリスクヘッジが必要かどうかは、運用できる期間とその資金の性質や必要性によって変わる。期間については、具体的には10年未満とか、そういった限られた期間しか運用できない状況を指す。また、性質については、「狙い通りに利益がでなくてもとりあえず問題ない資金」なのか、「狙った期間で狙った利益が出ていないと困る資金」なのか、「万が一、元本割れしたら詰んでしまう資金」なのか、そういう資金の必要性みたいなことである。
株式比率が高くなれば、それなりにリスクリターンも高まる。さらに株式といっても投資先がどこかによって変わる。今回ご紹介したとおり、元本割れ確率が7年で10%程度残るケースもあり得るため、運用期間が数年に限られていて、元本割れしたら困る資金で投資する、とか言われると、「とりあえずNISAでインデックス投資!」とは一概に言いづらく、多少はリスクヘッジしたほうがいいのでは?とちょっと考えてしまうのである。無制限で運用できる資金とは自由度が違う。
運用できる期間、資金の性質と照らし合わせて、投資先を考えてみてほしい。