iDeCoで重要となる3つのポイント

iDeCoは意外と難しい商品である。

2017年から多くの人が加入できるようになったiDeCoであるが、節税目的で始めて全く運用していない人がいたりと、その特性を理解せずに加入している人もたくさんいるように思う。

ここで、私が常々お伝えしてきたiDeCoの特性とポイントを簡単に記載しておくことにする。

ポイント1 iDeCoは投資商品

これは最も重要なポイントである。iDeCoは個人年金のひとつではあるが、実態は立派な運用商品である。

理由その1 手数料が高い

投資信託の中でもアクティブファンドに匹敵するくらいの手数料が取られる。しかも年金受取にすると、受け取るたびに振込手数料も取られる。しかも、金融機関によって手数料に差がある。

理由その2 運用益が非課税

iDeCoで運用すればNISAと同じく利益は非課税になる。これこそ最大のメリットである。iDeCoを運用しないと、最大のメリットを活かせない。

注意点

iDeCoは立派な投資商品であるが、NISAと違って「運用しないこと」が選択できる。掛金の配分を自分で行うのだが、その選択肢の中に定期預金がある。これを選択すると、iDeCoの掛金は定期預金で運用される。すると、ほとんど利益は出ない。元本割れは無いから安心だと思っていても、高額な手数料で削られる。

ちなみに、掛金の配分を行わずに放置すると、デフォルトで定期預金が選択される金融機関もある。一時期、これが問題視された。今は、デフォルト設定が安定的に運用できるバランス型投信になってる金融機関が多いが、とにかくiDeCoを運用せずに放置すると、手数料の面で悲しい事になりがちである。

ポイント2 iDeCoは節税ではなく課税の繰延べ

iDeCoは掛金がそのまま控除されて節税になるという。確かに掛金は全額控除される。年間10万円iDeCoをやれば、10万円が所得から控除され、税率10%の人なら、所得税約1万円、住民税約1万円、税金が安くなる。

これで終われば節税であるが、iDeCoは受け取る時に税金が取られる。自分が積み立てて運用したものを、自分が受け取るだけなのだが税金がかかる。NISAにはない特性である。

将来受け取るときに税金が取られるから、掛金積立時に税金が安くなる。逆に言うと、掛金積立時に税金を安くしてもらい、受け取る時に税金を納めている。要するにこれは、課税の繰延べである。

iDeCoで節税をするには、将来支払う税金よりも多く、掛金積立時の税控除を受ける必要がある。掛金積立時は、現役で年収が高く、所得税率も高いことが想定される。そのため、自然と掛金積立時の税控除のほうが多くなって、結果的に節税になる可能性が高いとは思う。とはいえ、受け取り時に課税されることは認識しておいてほしい。

ポイント3 iDeCoは受け取り方まで考える

ポイント2で、受け取り時の課税を認識してもらえば、その受け取り方が重要であることはお分かりいただけると思う。iDeCoは受け取り方を選べる。これもNISAにはないiDeCoの特性だ。しかも金融機関によって違う。年金として毎月受け取れたり、年1回で受け取れたり、10年や20年など受取期間も選べる。または年金でなく一時金も選べる。そのパターンによって、取られる税金の計算や手数料が変わる。どれが得かは人によって違う。しかも一時金の場合、退職所得扱いになるため、会社の退職金の金額や支払い時期も関係してくる。けっこう複雑なのである。

受け取り時に課税するものの、あまりにも取られたら運用益非課税も節税も意味が無くなってしまうので、そうならないような優しい計算方法にはなっている。(よくメリットで言われる「受け取り時にも大きな控除が受けられる!」というやつ。)

しかし、よく考えるとiDeCoはそもそも個人型確定拠出年金であり、公的年金を補完するための制度である。

2016年以前のiDeCoは、自営業者や企業年金のない厚生年金加入者しか加入できなかった。要するに、将来もらえる年金や退職金が少ないと思われる人向けに、自分で年金作ってもらう目的のものである。そういう仕組みで作られているので、年金が比較的多くもらえる人、退職金が多くもらえる人に向けた制度ではない。(その点ではまさに公務員にiDeCoは向いていない。そんな自分はやってますが。)

年金や退職金が少ない人は、何も考えずにiDeCoをやって好きなように受け取るだけで節税効果が出るような仕組みになっている。そうでない人は、受け取り方法まで考える必要があると思っておいたほうがいい。人によっては、また状況によっては、受け取り方次第で税金が減らせるかもしれない。

利益を出してしまえば問題ない

以上、iDeCoの特性とポイントであったが、ひとつ手っ取り早い戦略をお伝えしておく。

『細かい手数料とか税金とか気にしなくていいレベルに利益を出しまくる。』

利益は非課税なのだから、とにかく利益を出しまくれば、面倒なことを考えなくてもよい。

iDeCoは立派な投資商品なのだから、やるのであれば、節税目的と言わず、全力で運用することを考えてみてはいかがかと思う。